休憩15分・書くのは60分・読むのは5分

…あー、心地の良い気怠さだー。
キャパ600弱の劇場に対して客は1割程度。その半分は1500円という安価の為、宿代わりに利用してるブルーカラーやホームレス達で、残りは俺みたいなオタク連中と、生粋の映画ファンばかりという客層。そんな中で俺は真ん中の席を贅沢に陣取り、浅く腰かけて何となく天井を眺める。…オールナイト上映での休憩時間って、時間の流れ方が独特な気がするよ。今回は初めて浅草東宝に行ったんだけど、とても味わいのある建物で、何だか身に憶えの無い懐かしさが勝手に込み上げてくる。
さっきまで映画を流していた、微妙に湾曲したシネラマタイプの巨大スクリーン。決して座り心地の良くない座席。オレンジがかった照明。緩やかでイージーリスニングなBGM。どれも映画が好きな人の書いたエッセイに出てくるシチュエーションにそっくりなので、こうやって自分がそうした状況下に身を置いていると、「ああ、俺ひょっとすると、映画が好きなのかも」って思えてくる。…勿論錯覚なんだけどさ。
多分、きっと俺は映画なんて好きじゃない。世間一般の尺度から見て“映画が好きな人間”と呼ばれるのは、気が付くとその年度の興行成績1位から10位までを全部観てる多数派か、映画をキチンと理解した上でハイブロウな評論のできる本格派のどちらかだ。彼らは一方で映画を産業として支え、もう一方で映画を文化として支えている。そのどちらにもなりたくない( or なれない)と思ってしまう俺は、やはり映画を好きになる資格なんて無いんだろう。
…あー、音楽が止んだ。場内が暗転する。もうすぐ次の映画の始まる時間だ。