トム・ヤム・クン 雑感

随分前に某配給会社に勤める友人から聞いた話なのだが、本作の初お披露目となる試写を観に、態々タイまで行ってきた友人の後輩が、日本に戻ってきて上司らに本作の報告をするコトとなった。本来なら作品の出来栄えや、ターゲットとなる客層、どれくらいの収益が見込めるか?といった類のコトを語るべきなのだが、その後輩は前置きもなしに「象が凄かったんです」とだけコメントしたそうな。
まぁ、俺がうろ覚えな上に多少事実とは異なるのだろうが、確かに象は凄かった。ちゃんと演技だって出来る。倒れた母象に寄り添う子象のシーンなんて、余程躾が行き届いてないと撮れないと思うし。

内容自体、「取り戻す物;仏像→象」「舞台;タイ→シドニー」と変わっただけで、前作『マッハ!!!!!!!!』とはあんまり大差無いんですが、前作がトニー・ジャー*1の身体能力のプロモーションを兼ねていた為、飛んだり跳ねたりといったアクロバティックなチェイスが繰り広げられていたのに対し、本作は「もう、トニーの凄さは判ってるよね?」という前提で、アクションよりもバトルに重点が置かれていました。
で、バトルってのは倒す側に魅力が無いと栄えないワケで、その点に関してはこれでもかと言わんばかりに多芸異能のキャラが目白押し。レスラーやらローラーブレードの集団やらetc…中でもカポエラ使いには脱帽した。カポエラなんて今まで「ダンスみてぇなモンだろ?」とか嘗めていたのだが、画面上で見事に殺陣として成立してるのには鳥肌が立ちましたよ。

しかし、最も秀逸だったのは4分にも及ぶ長回しの大立ち回り。何が凄いって、あれだけのシーンがリテイク8回で済んでいるのが凄いよ。何ヶ月も入念なリハがあったそうだが、それにしたって8回だぜ?もっと苦労して作ってると思ったが、「頑張って作りましたけど、まだまだスゴイ事出来ますよ」的な余裕も感じます。
…と、滅茶苦茶褒めてちぎってはいるものの、話は微妙に繋がってないし、報道番組の挿入とかまるっきり無意味だし、欠点はそれなりに挙げられます。けど、そこらへんはまぁ、別にいいでしょう。バトル以外のモノを求めれば物足りないが、バトルのみを期待していれば大満足…ってカンジの作品でした。
そういや、ジャッキー・チェンへの敬意を表してか、空港で(長髪時代の)そっくりさんとすれ違うシーンがあったが、どうやら『酔拳3』でジャッキーと共演するかも…って話が上がってるらしい。うわ、観てぇ。

*1:映画秘宝では「正式な発音は”ジャー”じゃなくて”チャー”だ!」と声を荒げて主張しているが一向に浸透しない。雑誌『スクリーン』の独特な俳優表記みたいなモンか