雨あがる 雑感

雨あがる 特別版 [DVD]
今、俺の中で突発的に歴史小説ブーム到来(単に古本屋で目に付いてごっそり買っただけだが)。そんなワケで時代劇とか観る。
唐沢俊一センセイの言うコトにゃ、“巨匠”という肩書きは「作品の出来ではなく名前だけで作品を売る事が出来る人」に冠するらしい。つまり、内容が退屈だろうと力技で魅せてくれる者が巨匠と呼ぶに相応しいのだそうな。だから、テクニックを駆使して観客を楽しませようとか考えてるヤツの呼称は、せいぜい“天才”か“鬼才”止まりなんだと。少し乱暴な意見かも知れないが、あながち間違っちゃいねぇと思う(因みに昔の東宝映画宣伝部では隠語として、巨匠=先が見えてる人・鬼才=得体が知れない人・奇才=奇妙な撮り方をするのでよく判らない人…をそれぞれ指しているのだそうだ。)。

そんなワケで、巨匠・黒澤明監督の遺稿を映画化した本作は、確かに良く出来てはいるものの、所謂「巨匠の箔」みたいなのが足りずに秀作になりきれてない感じがします。<物凄くヒネくれた観方ではあるが。
とは言え、晩年の黒澤作品に関わったスタッフによって制作されているワケですから、観ていて「ああ、なんか巨匠っぽい」どことなく巨匠の香りが漂ってくる箇所もちらほら。雄大大自然を描写する様とか特に。あ、あと、「安心して作品が観れる」というのも巨匠の条件らしいので、そこら辺は及第点です。

キャスト陣で気になった人として、岡本喜八作品ですっかりファンになってしまった仲代達也が主人公の師匠として登場。だけど、出番は一瞬。残念。あと三船敏郎の息子さんも黒澤映画繋がりで出演、確かに時折父親の雰囲気を醸し出すんだけど、ちょっと力不足な気も。