山猫は眠らない3 決別の標準 雑感特別篇

・以前、深夜にTVで石井輝男監督の『顔役』が放映されてたんですが、その中で撃たれた組長が殺し屋に「そないに弾使わんと、ワシ一人も殺せんのか」と凄むシーンがありました。
・確かに、無駄弾の飛び交うジョン・ウー的なガン・アクションも派手で好きなのですが、やはり優れた殺し屋やガン・マンは、標的を一発で仕留めるストイックさを持つべきだと思います。…っていうか『リベリオン』に影響されて、ガンアクションを描く際に、安易にガン=カタとかに走るのはいい加減止めて貰えませんか?

・つーワケで、「ワンショット・ワンキル(一撃一殺)」の敏腕スナイパー、トーマス・ベケット曹長の活躍を観に、銀座シネパトスまで行ってきました。で、観た後に喫茶店でダベり。面子はいつもの通り。

登場人物紹介

俺:90年代は特撮とホラーとアニメしか観てなかったので、『山猫』シリーズは当然スルー。最近になって漸く『野獣教師』を観賞。
キ:中学の時に木曜洋画劇場で『山猫は眠らない』を観て感動。進路志望書に本気で“スナイパー”と書いて指導の先生を呆れさせる。
H:『山猫〜』を派手な戦争アクションだと思って劇場に足を運んだら、渋くて孤独な戦いを見せられ、そのカリスマ性に心酔。

前作・前々作のおさらい

俺:じゃ、始めまーす。まず最初に訊きたいんだけど、俺、いきなり3から観てる人間なのですが、前作・前々作を観てないと解らない部分って、主人公の右の人差し指が無い事ぐらいですか?
キ:まぁ、そんなモンかな?もともと伏線引っ張って続けてるシリーズじゃないからね。
H:つーか、本作でベケット依頼人に裏切られて敵と一緒に処理されそうになるけど、前作でも依頼主から裏切られてるんだよね。
キ:そうそう。そこら辺は学習しろよ。…と言いたい。
俺:愚直なんだねー。
H:更にぶっちゃけると、『山猫2』は舞台がヨーロッパなだけで、本作と内容があんまり変わんなかったり。

内容

俺:まぁ、作品的には手堅く纏まってるよね。
キ:それでいてツボ押さえてるし。
H:バーの大爆発とかな。内容としては無意味なのに“画的に派手だから入れてます”感がバリバリの描写で。
キ:何より90分って長さが最適だ。これなら全くカットを入れずに『木曜洋画劇場』で流せるぞ
俺:でも、ちょっと現地の若者を馬鹿にしてないか?ボスを倒したからって急に主人公を崇めるのは無理があるよな。
キ:まぁ、そこら辺はご都合主義だから…。ところで主人公の相棒役で登場したバイロン・マンって、明らかに“一撃一殺”のベケットと対極に位置してるよね。
俺;ああ、あの東幹久似の男な。何たって一人の標的に対して何発もブチ込んでたりしたもんな。観ていて何度も「おいおい、そんなに撃ってどうする?」とかツッコミたくなった。ああいうのって、その手の乱射ガン・アクションに対するアンチテーゼなのかもね。
H:でも、ジャングルで二挺拳銃を乱射するシーンって、ちょっと新鮮だったよね。

国際保護指定俳優 トム・ベレンジャー

俺:それにしても、トム・ベレンジャーって、“スペシャリストなのに人間関係には不器用な男”って役が似合い過ぎる。つーか、それ以外の役を見た事無いな。演技の幅は限りなく狭い役者だよな。
キ:『メジャーリーグ』でも『プラトーン』でも、大体やってる演技は一緒。笑わないんだよね。いっつも朴訥なツラしてて。
H:そしてアクション映画の主人公の時は毎回必ず麻薬を毛嫌いする
俺:定番だ。今の時代に貴重なタイプだよね。絶滅保護種ってカンジの。
キ:ホント、最近見かけないよなぁ。俺らボンクラが木戸銭払って守っていかなきゃならん人種だろ。

採点

俺:じゃ、採点すんべ。
キ:4点。もう俺の中にはトーマス・ベケットというカリスマが根付いているからね。ニヒルでストイックで。まぁ、思春期の思い入れってのもあるんだろうけど、それ以上にB級アクションの主人公って、しつこいぐらい自分の名前を名乗るんだよ。自己主張が激しいから印象に残るんだ。
H:俺も4点だね。内2点はベケット曹長に贈呈。手堅い作りが好感持てて1点。そしてラストの締めに1点。…ほら、ベトナム戦争モノの映画って、大抵ヘリで帰還するシーンで終るじゃん。戦場から離れるヘリに乗って一息つく――このシーンをラストに持ってくことで、漸くベトナム時代の清算を果たしたことを意味するんじゃないかと思うんだ。
俺:成る程ね。…俺は3点。内容だけで鑑みればこれでも大甘の採点なんだけど、安心して観れる堅実な映画を作るのって、ある意味職人芸の域だからね。そういうトコは評価したい。けど、他人に薦めるのは憚られるよなぁ。「判るヤツだけ観ろ」って雰囲気でさ。

余談

俺:…因みに監督であるP.J.ピースの日本公開作を見ると『フロム・ダスク・ティル・ドーン3』に続いてこれが二作目。どちらもB級映画の続編で、見事にその手の作品でキャリアを飾っていってる。こうなるとフィルモグラフィーを全部何かの3作目で埋め尽くしていって欲しいな。
キ:じゃ、次は『バイオハザード3』辺りを…。
H:イヤ、それだとメジャー過ぎるな。…『トリプルX3』とかじゃねぇの?
俺:…ああ、なんかマジで監督しそうだ。「P.J・ピース監督の次回作にご期待下さい」ってカンジか。
キ:それだと打ち切りマンガのハシラに書いてある文章みたいでヤだな。