ファニーゲーム 雑感

okmonster2005-06-29

・友人でもあり、俺の自主映画制作とかを手伝ってくれてるキノコ氏が薦めてくれた一品。事前にネットとかで評価を読み漁ってみると、「不快」という言葉が沢山出てきたので、さぞかし胸糞の悪ィサイテーな気分にさせてくれるんだろうなー。と、何だかマゾヒストみてぇな気持ちで期待して観たんだが…。いやぁ、オレはそれ程面白くなかったな。幸せな一家の団欒を引き裂くようにノイズ・パンクが流れるオープニングはとても好きなのだが、それ以外の部分は不快も愉快にもならず、単に退屈と感じてしまった。これなら黒沢清監督の『蛇の道』や、その続編である『蜘蛛の瞳』の方がよっぽど不快で面白かったってば。
・ある家族がリゾートにやって来た別荘で、押し入った二人の青年から延々と酷い目に遭わされるという話。残念ながら救いは全く無い。更には彼等が殺す理由(動機っぽいモノとチラつかせたりするが、どうも眉唾だ)も、家族が殺される理由も無い。
・取敢えず薦めた友人に「この映画のドコが良かったのか?」と訊ねたら、「サスペンスの王道を悉くハズしてるトコ」と答えた。
・成程。例えば本作には水に濡れて不通になった携帯を乾かすシーンがある。タオルで電池を拭き、ドライヤーを当ていく様子が延々と映される。次第に観客は「これだけ執拗に撮ってるんだから、いつかこの電話が繋がる瞬間が来るだろう」と、期待し始める。だが、これだけ長い時間を割いて描写したというのに、結局その携帯は二度と繋がるコトは無かったのだ。
・本作には、こうした“思わせ振りな伏線を張っておきながらクソの役にも立たない”シーンが連発される。このサービス精神の欠片も無い演出が徹底されてるってのが、一般映画としては確かに物凄いコトなんだろうけど、それを「斬新だ」って、手放しに評価出来ないんだよなぁ…。
・ほら、よく小学生が作文を書く時に、字数が足りないからといって無理矢理引き伸ばしてる文章ってあるじゃん。この映画って、丁度そんなカンジなんだよ。間とか無意味なシーンの挿入が多過ぎて俺には向かない。…ま、目の前で[息子が撃ち殺]されれば、あれぐらい長い時間放心してるのがリアルな対応なんだろうけど、「そこは映画なんだから、もっと端折ろうぜ。尺が勿体無ぇ」と思える貧乏性の俺。
・致命的なのは、暴力を振るう側に魅力が無いコト。劇中では加害者である青年が何度もカメラに向かって語りかけるというメタな演出が施されているのだが、これが観客を青年達の共犯者として迎えることを意図した演出であるのならば、青年は『時計仕掛けのオレンジ』のアレックスみたく、カリスマ性のある魅力的な人物として描かれなくてはいけない筈なんだよ。それとも、これも「不快」にさせる為の演出の一つなのか?
・最後に、OP以外に好きなシーンを一つ紹介したい。後半、家族の逆襲により青年は相方を殺されてしまう。すると彼は急いで部屋にある[ビデオのリモコン]を探し出す。何をするかと思えば、彼は[リモコンの巻き戻しボタンを押して、相方が撃ち殺される前まで時間を巻き戻す]のだ。…コントかよ?