フルタイム・キラー 雑感

フルタイム・キラー [DVD]
・映画配給業者の友人H氏に「スゴイ映画だったよー」と、劇場公開時から薦められていた作品。ここで言う「スゴイ」とは即ち「トンデモない」という意味のこと。ジョニー・トゥ監督は、時折こういうトンデモ映画を突発的に世に出すから、“香港映画界の三池崇史”とか呼ばれるんです。
・しかし、これ程吹替版を強く薦めたいと思った映画は初めてだ。吹替版ならば、アンディ・ラウの聴き取り辛い日本語を殆どカバーしてくれるからだ。惜しむらくは反町隆史の声も別の声優に吹替えてくれなかったコト*1だ。
・一つのズレで作品がどんどん在らぬ方向へ転がってしまう場合がある。発端は反町隆史が思いの外英語を喋れなかった為、急遽日本語会話での進行に相成った事で、このズレこそ“ハードボイルドアクション”が“バカ映画”へと変貌する第一歩であり、以後、何とか辻褄を合わせようと改変してどんどんドツボにハマっていく。なんつーか、現場で物語を再構築してる感がバリバリで、出来上がった作品はカタコトの日本語を話してるアンディ・ラウを日本人と思い込んだり、物語の視点が急に一人称の回想に変わったりするヘンな映画となってしまった。
・とはいえ、アンディ・ラウがプロデューサーを兼ねてるだけあって、片手でショットガンを振り回して派手に活躍する“オレ様映画*2”としてカッコ良く仕上がってます。パッケージやテロップには反町隆史との共同主演って扱いになってるけど、明らかに役者が上になってるし。
・でも、初っ端から「俺、ハデなアクション映画が好きだからよくマネるんです」ってアピールされると、その後どんなにアクション映画からパクっても「まぁ、真似してるんだから仕方ない」って思えてしまうのは、パクリを指摘される前にネタ元を割ってるみたいで卑怯だなぁ。…警察署を襲撃する時にショットガンを花束に偽装させるのって北野武監督の『3-4X10月』が最初だよな?…『スカーフェイス』だっけ?ともかくアクションは流石香港クオリティ。だけど他はグズグズって印象の映画でした。
・全く関係無いが、途中、セリフの中に『メタルスラッグ』ってゲーム名が急に出て来て妙に親近感を覚えたり。俺も調子の良い時は1コインでラスボスまで行けるぜぇ。…でもアンディ・ラウ演ずるトクは“光による癲癇持ち”って設定の筈なのにチカチカするTVゲームとかやって平気なんだろうか?

*1:…イヤ、単にソリマチのカツゼツが悪ィと言ってるワケじゃなくて、外国映画だと日本人の発する日本語すら聴き取り辛いケースが多い。恐らくガイジンの録音係が日本語を理解してないから、「音が録れていればOK。」ぐらいの認識で制作を進めちゃうんだろうな。

*2:「オレが金出してるんだから、オレをカッコ良く撮れ!」とナルシス気味に制作された映画のコト。例を挙げればウェズリー・スナイプスの『ブレイド』や、大神源太の『ブレード・オブ・ザ・サンとか