ミリオンダラー・ベイビー 雑感

・99年に『サイダーハウス・ルール』がアカデミー賞を取れなかった理由として、「中絶医の話だったから」と言う人がいる。俺もアカデミー作品賞が作品の面白さで決まってないコトぐらいは重々承知してる人なので、「然もありなん」だと思ってる。だって、アメリカは中絶や同性愛に反対さえしてれば選挙で票の過半数が取れるような保守派だらけの国だからね。
・で、本作はそんな中絶やホモセクシャルと同レベルの、カトリックが人としてやっちゃいけない“ある行為”をズバリやっちまってるので、本来なら権威と政治と欲望に塗れたアカデミー賞で、こんな作品が罷り通る筈が無いんですが、実際、監督のイーストウッドはコレですんなりとオスカー像を手に入れてしまっているワケで、つくづくクリント・イーストウッドの力って強大だなぁ。と感心するばかりです*1
・俺、滅多な事では女優とか褒めない人間なんですけど、流石に今回のヒラリー・スワンクは褒めなきゃならんでしょ?あれは凄いわ。登場時は肌の露出を抑えてて、時間の経過と共にいきなり引き締まった二の腕や腹筋を見せるもんだから、ちゃんと成長が手に取るように判る。…あの演出はやられたなぁ。
・後半の展開(特に主人公の決断)には賛否両論あるんでしょうが、誰も、何も、どうする事も出来ない事なんて世の中には沢山転がってるワケで、だから「せめてフィクションぐらいはハッピーエンドにしてくれよ」って思ってる人には向かないでしょうな、コレは。どちらかと言えば映画に「リアル」を求めている人向けです。所詮、人間なんて無力の塊ですから。
・まぁ、デートの肴にするにはちょいとばかり重過ぎる内容なので、「話題になってるから」という軽い気持ちで彼女連れて観に行って、絶望的な気持ちになってくれればなぁ…と、願ってやみません(性悪)。

*1:まぁ、本年度のアカデミー賞って、他にもクリス・ロックが司会したり何だりと、保守的なイメージを覆そうとする姿勢が見え隠れしてるのだが。