老人Z 雑感

老人Z [DVD]
・久々にオチで度肝を抜かれた作品。まぁ、ある程度は予測範囲だったのだが、それがよもや[鎌倉の大仏]とは何とも豪快な。…しかし、コレってあんまり芳しい評価って聞かないよなぁ。案外面白いのに。
・こーゆー話は、もっと詳しいマニアの方がいっぱいいるので、底の浅い俺が訳知り顔で語るのは恐縮だが、80〜90年代に制作されたオリジナル・アニメに登場するメカの特徴としてよく挙げられるのは、触手の様に絡み合う無数のコードと、雑然としたスタイルだったように思える*1。本作でもパスタの入った鍋をひっくり返した様な(by 小路啓之)コードの束が舞い、90年代アニメを象徴しています。更に“あらゆるモノを取り込んで自己増殖を繰り広げる”って設定がツボ。
高齢化社会に於ける老人介護問題をSFで解決させたもので、現実とそう離れていない世界観で描かれる実存的アニメ映画の走りみたいな作品。だが、寝たきり老人を“お荷物”と表現しながらも、介護する側に悪人が存在しない(厚生省に老人を引き渡した“娘家族”が、全く描かれていない)等、さほど社会問題を深刻に取り扱ってる作品ではないので、あくまで娯楽作として鑑賞することをお勧めする。悪く言えばB級なんだけど、そこがいいんじゃないか!
・作品の公開が91年って事で、バブル崩壊直前のイケイケ感が全編に漂う。女性キャラの眉毛も太目だし、“音に反応して動く缶ビールの置物”といった小道具も時代を感じさせる。当時はホンダのバイクとタイアップしていたらしいが(当時のポスターやビデオ版のパッケージには大きく描かれている)、登場していた機械の殆どがスポンサーであるソニー製だった方が印象に残っている。だって介護ベッドの頭脳部分にもしっかり“SONY”と刻印されてるし。
・しっかし良く動くよなぁ。まだアニメ全体の製作本数が少なかった頃だから、質が高ぇや。特に自我を持った介護ベッドがモノレールの路線を疾走するシーンは屈指の名シーン。誰が描いてんだ?と、エンドロールを観れば、今では第一線で活躍してる人がフツーにヒラの原画スタッフとかやってる豪華(…だと判ってしまうのは、大学時代に知り合った悪友の影響か…。ヤな賜物だなぁ)な布陣。いや、眼福眼福。

*1:それ以降は機能美の追求と、「そんなゴチャゴチャしたモン描いてる暇なんて無ぇよ。」という制作側の悲鳴から、シンプルなデザインか、或いはCGにし易いカクカクしたモノへとシフトしていくのだが。