サザエさんの婚約旅行 雑感

・ラスト。ココから画面がシネスコサイズになる。今度は流石にザワめかなかったけど。
・実はコレが一番観たかった作品。数年前、『オースティン・パワーズ』公開に併せて洋泉社より出版された馬鹿映画特集雑誌『映画秘宝vol.10 GOGO!バカ大将』で本作について少しだけ触れていた。本書に拠れば、グラバー園にやって来たカツオは「しかし、長崎は大変だねぇ。海からはピンカートンがやってきて、空かはピカドンが降ってきて」というセリフを発し、それに対し一行が「コイツぁ、巧いコトを言うねえ。ハッハッハ」と、賑やかに笑うのだそうだ。
・で、今や日本の平均的・理想的家族像として描かれる『サザエさん』を覆すこの問題スレスレの発言を、(誰かがトチ狂って封印とかする前に)是非ともこの目で確認せねば!と、勢い勇んでやって来たワケです。…でも、まぁ、実際に観てみると、そんなに問題のある描写でも無かったり。ちゃんと平和記念象の前で、原爆の恐ろしさをカツオに説教するシーンといった、反戦メッセージは含まれているし。
・前回の九州転勤が伏線となり、婚前旅行として長崎を巡るお話。観光協会がスポンサーに着いている為、まんま観光案内みたいな展開。…あ、今気付いたけど、これって今のアニメ版OPの元祖じゃないか。ただ、まだ工業公害が問題とされてない時代なので、工業地域から揚がる大量の煙を眺めて、「すごーい。」みたいな感想を漏らしてました。
・あと、小ネタとして、ワカメが居間で『サザエさん』の漫画を読んでるんだよ。こういうのをメタ演出って言うのかね?
・さて、内容からは外れるが、本作はフィルムの保存状態が非常に悪く、カラー映画なのに色褪せて画面がセピア調になってしまっている。カット割もズタズタだし、セリフも聞き取りにくい(特に花菱アチャコが)。こうしたソフト化されない作品は、採算がとれないからリマスターやデジタル処理をして綺麗に修復される事は絶対に無いと思う。となると、現存するのはこの劣化していくフィルムだけだけか…。その内観れなくなって幻となるんだろうな。