人の本質は魔太郎の如き陰険さ也

オールド・ボーイ』感想。ネタバレを極力控えながら感想を書くがシンドイ作品であるが、まぁ、頑張ってみる。(…が、やっぱりネタバレ入っちゃってるんで一部反転)
先々週辺りの『TVチャンピオン』で、カラクリ王決定戦なるものが放映されていた。『ピタゴラスイッチ』に登場するような入り組んだ仕掛けの中を、ビー玉が延々と転がっていき、次の仕掛けを発動させる。それがまた次の仕掛けを発動させ、次の次の仕掛けを発動させ…。で、そんな紆余曲折を経た末に、そのビー玉は遂にラムネの栓を抜き、中身がコップに注がれた。
何てことだ。散々技巧を凝らし、遠回りをしたクセして、それは“ラムネをコップに注ぐ”だけの装置に過ぎなかったのである。正攻法で行けば刹那で終る作業を、コイツは呆れるほど手間を費やして漸く成し遂げたのだ。無論この装置に感心こそすれど、利便や合理を求める事は出来ない。そこにあるのは制作者の満足だけだ。
前置きが長くなったが、本作は、“ラムネをコップに注ぐ”を“復讐を果たす”に置き換えた、巨大なカラクリ装置とも呼べる。冒頭に於ける主人公を一室に監禁する事など過程でしかない。15年の歳月ですら下ごしらえ。…よくまぁ、こんな回りくどい方法を考えついたモンだ。まるで京極夏彦先生の『絡新婦の理』の犯人みたいだ。しかし、復讐に至る道程に穴が無い…という訳でもない。復讐に至るまでの過程には、随分と無理のある展開だ。あんなに都合の良い催眠術になんてかかるかよ?って思うし。
些か強引かも知れないが、コレは現代の復讐談というよりも、現代を舞台にしたダーティな寓話として捉えるべき作品なんじゃないか?って思っている。何故なら本作は子供向けにパラフレーズされる以前の、残酷な昔話に似た怪しい魅力に満ちているからだ。だって、ほら、昔話にゃ近親相姦ってのはよくある話だし、催眠術師ってワードは魔法使いに言い換えたっていい。更には「オシャベリは舌を抜かれるぞ」という教訓めいたモノだって見出せる。
だからこそ、ちょっとオチが弱かったような気がした。昨日も書いたが、あれは「臭い物に蓋」の理論だ。「ヤなコトは無かったコトにするのが一番だ」というのはある意味真理かも知れないけど、それが容易くできりゃあ苦労しねーんだよ。それでなくても東洋人って人種は根に持つタイプなんだよ。俺だってあの時の出来事は、今じゃ「気にしてないよ。」って平然な顔でサラっと口にしてるけど実際にゃまだハラワタ煮え繰り返ってて……。ああ、脱線した。
特に最後のシーン。俺なら足跡を辿った先に70歳になったもう一人の主人公が雪の中に倒れてるってオチにするけど。どうかしら?
ビジュアル的には見所満載で、バイオレンスが好きな人ならほぼ満足できると思います。特に監禁場所でのアクションを長回しで真横から捉えるシーンは最高。何でああいうのを日本で出来ないんだろ?←アジアのアクション映画を観る度にこのセリフを漏らす俺。
それにしてもあの時のコトは………