『マッハ!!!!!!!!』感想。

金欠が故に、月に1度ぐらいしか映画館に足を運ぶ余裕の無い俺が、この夏一番観たかった映画がコレだったりします。巷じゃハリポとか蜘蛛男とかセカチューとか騒いでいましたが、そんなの何処吹く風って感じで『マッハ!!!!!!!!』の公開を心待ちにしてましたよ、ええ。つくづく、世間とのギャップに大きさに気付かされる今日此の頃。
どうやら、タイという国では、例え娯楽映画であれど、仏教を軽んじる行為というのは御法度のようです。かつて、タイで制作された『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』という劇場公開作品を観た事があるのですが、この作品、タイトルに『ウルトラ兄弟〜』とか銘打っておきながら、実質の主役はインド神話に登場する白猿ハヌマーンだし、やたらと信仰心を試すようなシーンが挿入されてるし、仏を大切にしない盗賊は無惨に踏み潰され、信仰心の無い科学者は瓦礫の下敷きとなるし…と、日本人にはかなり受け入れ難い内容となっていました。本作も同様に信仰心溢れる敬虔な仏教徒が主人公だし、仏を敬わない輩には罰が下ったりするのですが、『ウルトラ6兄弟〜』の時に感じたような妙な違和感はありませんでした。(同じタイ映画という括りだけで二作を比較しようとするのがそもそも間違っているのですけど…)寧ろ、仏と共に生活を営む村人達の純朴な様は、先進国の映画では観られない無垢な印象を受けました。
まぁ、こうした箇所は本作に於いて然程重要じゃないので、肝であるアクションの感想に移ります。正直、映画を観ている最中は、「こうしたアクションが街中で堂々と出来るのは、おおらかでアバウトなお国柄と、多少の無茶を物ともしない無謀さのおかげだろうなぁ。」などと考えておりました。が、EDに流れたメイキング映像を観る限り、キチンとしたリハーサルを踏まえた着実なアクションだったようで、俺が如何にタイ映画に対する間違った先入観を込めて観賞をしていたかを痛感しました。というか、タイ自体に如何わしいイメージを持っていた所為かも知れません。猛省。
近年の日本から、海外でも通用するようなアクション映画が生まれない理由は沢山あるでしょうが、“主役が本気で体を張ってない”というのも大きな要因かと思われます。技術の進歩によって、多少の無茶はCGなんかで表現できてしまう日本では、役者が無理に体を張らずとも、誰もがクンフーの達人以上のアクションをやってのけてしまえるワケです。そんな時代だからこそ、技術なんかに頼らず己が肉体のみで表現されたアクションは衝撃的だし、同時に現代人が忘れてしまったハングリーさみたいなモノが伺えるような気さえしてきます。
冒頭で偉い人に「矢鱈滅多にムエタイを使ってはいけない」と釘を刺されていた割に、バシバシ闘ってたり、変な機械を通して喋ってた悪玉が、後半フツーに喋ってたりと、細部ではツッコミ所が満載なのですが、理屈抜きで、カッコ良いアクションってのは、観ていて心が震えるモノです。「もう当分はアクション映画を観なくてもいいや」と、思えた作品です。全盛期のジャッキー・チェンが好きな人必見。