ルパン三世念力珍作戦 雑感

ルパン三世 念力珍作戦 [DVD]
ルパンシリーズの黒歴史とも呼ばれている(俺が勝手に呼んでるだけなんだが)実写版ルパン三世だが、いざ観てみると意外に良いカンジ。確かにアニメ版に慣れ親しんでいる人間にしてみりゃ、そのユルさとギャグの寒さに脱力は必至だろうが、当時の劇画雑誌に載ってるギャグをそのまま再現しているような雰囲気は、何となくクレイジー・キャッツの映画に通ずるモノがある。まぁ、そもそも企画メンバーの中に赤塚不二夫がいる時点で、その中身のナンセンス度合は推して知るべしなんだが。

ところで、ルパンと云えばフランス。フランスと云えばヌーヴェル・ヴァーグヌーヴェル・ヴァーグと云えばゴダールだが(強引)、本作の突然観客に語りかけるようなメタ演出や、大胆なジャンプカットといった手法って、映画監督ジャン=リュック・ゴダールの作風と被ってないかい?少し前の『映画秘宝』では、「ゴダールのやってる演出は全部ギャグとパロ。コメディにならないのは笑いのセンスが無いから。」と言い切ってたけど、ひょっとすると、70年代の和製コメディこそ、ゴダールの作ろうとしていた理想の映画なのかも知れないね。
…戯言はさておき、本作の唯一の魅力は圧倒的な「ユルさ」である。例えばサブタイの『念力珍作戦』だが、観終わった後も、一体ドコが「念力」なのかサッパリ解らんぐらい無意味なモノで、後で調べてみると、単に当時ユリ・ゲラーとか超能力がブームだったからテキトーにつけたという。このユルさ!こういうのを許せるかどうかで、評価は大きく変わるんじゃないかと。
それと余談だが、本作は公開時、日本映画史上最大のカルト作品である『ノストラダムスの大予言』と併映という誉れ(?)を持っている。そういったイミでも、カルトになり損ねた珍作と言えよう。