マッスルモンク 雑感


・先月、ジョニー・トゥ監督の『フルタイム・キラー』を“バカ映画”として紹介しましたが、それが決して意図して馬鹿になったワケではないコトもその際に書きました。その後、完成した『マッスルモンク』の風評だけを聞いた時、俺はてっきりジョニー・トゥ監督が本気でバカ映画を作りにいったと思ってしまいました。だって、肉襦袢を着たアンディ・ラウ(↓)が全裸で夜の香港を疾走する映画だって聞いてたし…。

・男性ストリップ・バーで働くビック・ガイは、元少林寺の修行僧。他人(畜生でも可)の前世を見ることの出来る超能力を持っていて、その前世の業(カルマ)によって、その人の今の人生が決められているという。例えば主人公は走る犬の背後に、犬を虐めている子供を幻視する。これは犬を虐めた因果によって、現世では犬として生まれてきたコトを説明しているワケだ(つまり、今の俺がこの世でモテないのは前世でモテモテだったからなんだな、きっと)。ある日、途轍もなく大きな業を背負った女刑事を出会い、彼女を業から解き放とうと決心する。
・前半は痛快なアクション娯楽作だが、後半から“カルマからの脱却を図る悟りの旅”という、仏道修行や禅問答みたいな映画になる。ここで言う“カルマからの脱却”とは、要するに赦罪の精神であり、復讐の輪廻を断ち切る行為である。憎むべき相手を抱擁し、受け入れるコトである。もし、普く全ての人がコレを実践すれば、全員極楽に往けるハズだ。こんなにも直截的に世界平和を訴えているクセに、娯楽作としてキチンと魅せてくれるんだから大したモンだ。もう、こうなったらジョニー・トゥノーベル平和賞とかをあげるべきだと思うんだ。
・全てを悟ったビック・ガイは山を降りる時に脱ぎ捨てた法衣を再び身に纏う。ここになって今まで装着されていた肉襦袢がこの場面の為に施された演出として効果的に作用する。うわ、単に奇を衒ってやってたんじゃねぇんだ。脱帽。
・ちょっとナルシス入ってる筈のアンディ・ラウが、こんなコントみてぇなボディスーツを着て演技してるのを観た時は、「この人、変な役も体当たりで挑むような役者に成長したんだなぁ。」とかしみじみ思ってたんだが、特典映像のインタビューを見たら、最初は「恥ずかしくて泣きたくなった」が、次第に「こんなカッコの俺もアリなんじゃねぇの?」と受け入れたとのこと。やっぱナルシストだ、この人。