戦国自衛隊 雑感

戦国自衛隊 [DVD]
・『戦国自衛隊1549』(以下『1549』)の監督である手塚昌明氏のインタビューに拠れば、陸自が『1549』の撮影に全面協力する条件として、隊のイメージダウンに繋がる描写を入れないコトを要求されたという*1。具体的には(以前『1549』の雑感にも書いたが)自衛隊員による同士討ちや、レイプ、一般市民の殺害といったもの。
・実は、これらの描写はリメイク元である本作が既に全部やっちまっているのだ。そもそも本作は、そのイメージを損ないかねない内容の為に自衛隊の協力を仰ぐことが出来ず、衣装から兵器に至るまで全部手作りで撮影されたモノ。故に防衛庁にしてみれば「コレはマズいんじゃねぇの?」という描写も平気でやってのけてしまった。恐らく防衛庁は当時の教訓から、協力要請を突っ撥ねて好き勝手作られるよりも、撮影の時点で既に制約を設け、イメージダウンを回避させる方が賢明だと悟ったんでしょう*2
・理由は良く判らんが、何故だか戦国時代にタイムスリップしてしまった一個小隊。主人公である伊庭三尉は元の時代に戻る為には今の時代へ積極的に介入し、歴史が自分達を“時代の異物”として認識されれば、現代に戻れると考えた(…ここら辺がフツーのタイムスリップものと大きく違うトコだ)。だが、“歴史の強い修復力”は思惑と別の方向に作用する。映画では詳しく言及されてないが、近代兵器の圧倒的火力で天下を目指す伊庭を、歴史は[織田信長]として処理しようとする。つまり本作のラストシーンは、歴史が用意した[本能寺の変]のオルタナティブ(代用品)であったのだ。
・原作の面白い部分だけを抽出して二時間弱に纏め上げている為、人物描写に時間を割けていないが、それでも全く個人を描写されていない『1549』に比べれば隊員一人一人の個性が十分出されている。つーか、合戦をちゃんと見せている時点でコッチの方が断然面白いんだよな。派手だし。何より大作なのにハッピーエンドで終わらせない辺りが好印象。
・あと、出演陣が無駄に豪華。意味ありげなセリフを吐き、後々絡むのかと思ったらそれっきり出てこない草刈正雄とか、男装の薬師丸ひろ子とか。特撮ファン向けには『仮面ライダーX』の速水亮に、平成ゴジラの中の人・薩摩剣八郎や、帰ってきたウルトラマンの中の人・きくち英一なども出演。俺は気付かなかったけど*3

*1:映画秘宝』05年7月号より

*2:その為だか知らんが、完成した『1549』の内容は本作とまるで正反対になってて面白い。何せ本作の主人公と同じ行動起こした鹿賀丈史が、『1549』では敵役なんだから。

*3:何故かキャストとかスタッフロールが無いんだよ、この映画。