殺人狂時代 雑感

okmonster2005-06-06

チャップリンのじゃない方。どうしてこれが“一年間オクラ入りを喰らった挙句二週間で打ち切られた作品”になるのだろう?すっげぇ面白ぇじゃん。岡本喜八って人物は、よっぽど東宝の上層部に嫌われてたんじゃないだろうか。
パラノイアの患者をリサイクルして殺し屋に育て育て上げ、人類の粛正を企てる組織と、それに偶然巻き込まれた大学教授との攻防戦を描いたものだが、次々と襲い掛かる刺客は眼帯や蝙蝠傘などに武器を仕込んでおり、そこら辺が007みたいなスパイアクション風味。
・共同脚本に名を連ねる山崎忠明は、『聖闘士星矢』や『デビルマン』といった往年の東映アニメの脚本家で、物語の展開や主人公のオフビート加減は氏がメイン脚本を務めた『ルパン三世』を彷彿とさせる。…いや、殺し合いだというのにカラッとしてる作風は、寧ろ岡本喜八監督の持ち味か。コレを観た後だと、“ルパンシリーズの黒歴史”とも呼べる実写版ルパン『念力珍作戦』は、彼が監督をやるべきだったんじゃないか?と思えてしまう。
・本作一番の見所はやはり天本英世だろう。悪の統領とか大幹部を演じると一際冴える怪優なのだが、もしかすると本作に登場する溝呂木省吾は天本英世のベストアクトかも知れない*1。黒革の手袋を軋ませ、知性と凶器を併せ持つカッコ良さ。スペイン留学してた為かドイツ語の発音もサマになってるし。
・そしてそれを迎え討つのが飄々として掴み所の無い仲代達也。この人も相当キてるキャラで、部屋に置かれた胸像を「ママ」と呼び、ボロいシトロエンに三足の下駄を携えて乗り込む水虫持ち。この二人の曲者が宮殿のような様式の精神病棟で闘うクライマックスは見事と言うしかない。
・再評価が高いというのに未だにビデオは廃盤、DVD化の予定も無し、という理不尽な扱いを受けている作品なので、発見したら是が非でも観た方が良いかも。

*1:一説には『仮面ライダー』に出てくる死神博士のモデルとなった役だと言うし