ドラゴン怒りの鉄拳 雑感

ドラゴン怒りの鉄拳 [DVD]
・『マトリックス』ってのは、ぶっちゃけると主人公達が功夫を駆使して“体制”の僕(しもべ)である黒服のエージェントと闘う映画だ。嘗て「マトリックスの世界では何でも可能な筈なのに、どうして態々クンフーで闘うのか?」という質問に対し、監督のウォシャウスキー(弟)は
「だって、クンフーの方がカッコイイじゃんか!」
と、素敵な返答をしてくれた。が、それ以上に主人公達が功夫に拘る理由が、本作を観てると明らかになっていく気がする。
・本作は実在の武道家霍元甲が、大日本帝国統治下の上海で受けた犬並みの扱いにブチ切れて大暴れする話です*1(思い切り乱暴な説明)。当時、主演のブルース・リーも、手酷い人種差別を受けてハリウッドに絶望し、香港に移った矢先だったので、その怒りを霍元甲の怒りとオーバーラップさせたのでしょう。結果、全編憤怒の塊みたいな作品に仕上がってます。
・先述の『マトリックス』と比べると、“マトリックス”と“大日本帝国(それにハリウッド)”の違いはあれど、要するに憎むべき怨敵は“体制”で、つまり功夫とは体制やマジョリティと闘う為のパンク・ロックな格闘技であり、中でもジークンドーブルース・リーの被差別者としてのルサンチマンが込められた、世界を変える為の“怒りの鉄拳”なのです。だから体制と戦う映画の主人公は須くジークンドー(或いはブルース・リーのモノマネ)やヌンチャクを扱えなくてはいけないのだ*2
・これは世の中に不満があるヤツは、テロやチンケな犯罪に走るよりも、功夫を習った方が余程マシだ。と、教えてくれる映画である。…まぁ、最後は[警官隊(つまりは体制の僕)に蜂の巣にされる]んだけどね。これはこれでイイと思ってるよ。主人公の怒りを「鎮める」のではなく観客に「託す」。そんなラストで。
・今回はTV版つーコトで、時間の関係からか、公園で「犬と中国人は立入り禁止」と書かれた看板を叩き割るシーンと、焚き火で犬を焼いて食うシーンがカットされてました。
・あと、本作に登場するボスの“鈴木さん”こと橋本力氏は、映画『大魔神』で大魔神の中の人、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』でバイラス星人(人間体)の一人を演じており、特撮界では割と知られてる人です。

*1:まぁ、史実ってワケじゃないが

*2:きっとIZO』が失敗したのも、ジークンドーを使ってないからだ