暴力脱獄 雑感

暴力脱獄 [DVD]
古い映画を好んで観る事の少ない俺ですが、“スカパー!シネマ倶楽部”に連載されている町山智浩氏のコラムを読んで、興味が湧きました。
http://cinemaclub.skyperfectv.co.jp/Column/hihou/200502.html
詳しい事は↑のコラムが全部述べているので、今更俺が書く事なぞ無いのですが(オマエ最近、ソレばっかだな。)、一本の作品がそこまで計算高く作られているとは思ってない俺がコレを読むと、「本作の奥深さを誇張させる為に、どっかで都合良く解釈してんじゃねぇの?」と、穿った見方をしてしまう。
例えばコラムでは「腕を広げて倒れた主人公をキリストに見立てている」と書かれているのだが、正直、「机の上で手を広げて倒れてりゃ、誰だって十字架に架けられてる様に見えらぁ。」と、読んでいてこじ付け感が否めなかった。だが、倒れたポール・ニューマンの足がちゃんと交差してある*1のを確認し、それが確信的な描写だと判ると、ラストの十字路も破かれた写真も、みんな十字架の見立てに思えてしまう。どこまでが確信かは知らないが、やはり映画って奥深ぇんだな。と、感心。
要するに本作は「俺は神なんて信じねぇ」と言い切る主人公を、新しいキリストとして描いた作品であり、キリストみたく湖を渡るとか、悪魔を祓うといった大きな奇跡を起こさない代わりに、一時間で茹で卵を50個食うとか、日没前に仕事を終わらすといった、小さな奇跡を振り撒いて、受刑者達の心に希望を与えるというヒューマンドラマなのだ。
こう書くと非常に道徳的な作品に聞こえるが、女ッ気が全く無いので、途中で“洗車をするブロンド美女を延々と映す”というサービス精神も忘れない、素晴らしい娯楽作になってます。
ところで、刑務所での仕打ちとして最もポピュラーな“自分で掘った穴を埋める作業を繰り返す”ってのが、本作でも出て来る。よく噂には聞いた事あるけど、実際にドコで行われていたとか詳しいデータって無いよなぁ。ホントは都市伝説の類なのかしら?

*1:十字架に架けられたキリストの足は、一本の釘で打ちつけているので、大抵足首を重ねてある。