ああ爆弾 雑感

・日本映画を50音順に並べて十指に入る作品なので索引が楽。(なんて感想だ)
・ヤクザの親分が三年間の御勤めから帰ってきたら、政界進出を狙うインテリ派(しかし[文盲])に事務所が組員ごと乗っ取られてしまう。孤立無援、卒倒する程ハラワタ煮えくり返った親分は、刑務所で知り合った爆弾犯と手を組み、爆死させようと目論む。
・人殺しを企てる復讐譚にも関わらず、陰々滅々とした恨み節が一切無く、全体的にカラッとしてて妙に明るい。例えば爆弾犯の描写。ステロタイプな爆弾魔のイメージって、陰険なサイコ野郎なんだろうけど、本作では飄々としたキャラクターで、「あそこを爆破したらきっと気持ち良いんだろうなぁ」といった不穏な言動を、まるで子供の様な表情で語る。
・導火線の燃え方とマッチしたOPや、二つのお題目が交互に唱えられるシーンなど、音に合わせた役者の動きやカット割は、リズムを重んじる監督の真骨頂。更には昔気質の親分サイドでは浪曲が流れ、物語が歌舞伎調に展開するのに対し、新興インテリ側はモダンジャズをBGMにミュージカル仕立てになるという変わった趣向。つまり一つの映画に二つのリズムが混在してるのだ。
・こういう冒険じみた作品でありながら、娯楽作として興行的に成功させている*1ところが、アルチザンと呼ばれる所以なのかも。

*1:最も、当時同時上映だった『砂の女』のお陰かも知れないが…。