EAST MEETS WEST 雑感

okmonster2005-04-19

岡本喜八監督が、大きく広告を打つ割に全く記憶に残らない作品ばかり乱発する奥山和由総指揮の下で製作した、喜八流西部劇。
ジョン・フォードの『駅馬車』に魅せられて映画監督を目指した程、西部劇に深い思い入れのある喜八監督。デビューを果たした1958年から、いつか西部劇を撮りたいという想いを胸にし、30余年の歳月を経て漸く悲願の西部劇を完成させた…。その作品こそが本作である。こうした製作までの経緯を見るだけでも、一監督の生涯を物語ってるみたいで、何だか熱いモノを感じてしまう。
・…が、そんな熱意とは裏腹に映画はヒットせず、更には監督が私財を投げ打ってまで撮った為に借金まで背負ってしまったという*1。何つーか、報われない。竹中直人がラストに呟く「これで、おしめぇ。」というセリフから鑑みても、本作を生涯締めの一本(そこまで大袈裟でなくとも、“人生一区切りの一本”位の意味は持っていたかと思う)として撮った渾身の作品に仕上げたかったのだろうになぁ。
・つーコトで、失敗作の烙印を押されてる部類の作品ではありますが、あくまで、“岡本喜八監督作品にしてはツマラナイ”という評価なだけで、別に目も当てられない程酷いってワケじゃないし…。そもそも、岡本監督はこれを撮ってる時点で既に70歳を越えてるんだぜ?それで、アメリカくんだりまで行って撮影に行ってるんだぜ。しかも荒野で。そんな監督のバイタリティを画面からひしひしと感じ取る事が出来れば、本作は十分楽しめる娯楽作となるでしょう。その為には監督のバックボーンとかを予め知っておく必要はあるけどね*2
・色々サイトを巡ってたら、本作失敗の要因の一つとして、体調を崩した為、監督自身が編集に携われなかった事を挙げている。後にリリースされたLD版は監督自ら編集したバージョンらしく、両方を見比べた人が言うには「対して尺が違わない筈なのに、数段テンポアップして小気味良い」との事*3。…確かに今まで観た監督作品全体を通しても、特筆すべきはそのテンポの良さだったからねぇ。

*1:裏が取れてないので、あくまで噂と憶測の域を出ないが。

*2:本来、こういう「ダメだけど、一生懸命頑張ったから良し」的な側面からの評価の下し方って、つまんないモノに対するフォローや同情にしか見えないから、好きじゃないんだけど。

*3:23日に催される浅草東宝のオールナイトでは、コチラのバーションの『EAST〜』を上映するらしい。…どの程度違うのか確かめに行こうかねぇ。